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男色大鑑 井原西鶴 日本紀《にほんき》愚眼《ぐがん》に耽《のぞけ》ば。天地《あめつち》はじめてなれる時ひとつの物なれり。形《かたち》葦芽《あしがい》の如《ごと》し是則神《これすなはちかみ》となる。國常立尊《くにとこたちのみこと》とまうす。それより三代は陽《やう》の道《みち》ひとりなして衆道《しゆだう》の根元《こんげん》を顯《あら》はせり。天神《てんじん》四代よりして陰陽《ゐんやう》みだりに交《まじはり》て。男女《なんによ》の神いでき給ひ。なんぞ下髮《さげがみ》のむかし當流《たうりう》のなげ嶋田《しまだ》。梅花《ばいくわ》の油《あぶら》くさきうき世風に。しなへる柳《やなぎ》の腰紅井《こしくれなゐ》の内具《ゆぐ》。あたら眼《まなこ》を汚《けが》しぬ。是等《これら》は美兒人《びしやうしん》のなき國《くに》の事|欠《かけ》。隱居《ゐんきよ》の親仁《をやじ》の翫《もてあそ》びのたぐひなるべし。血氣《けつき》榮《さか》んの時|詞《ことば》をかはすべきものにもあらず。總《すべ》て若道《じやくだう》の有難《ありがた》き門《もん》に入事おそし      貞享四年竜集丁夘陬日 [#地付き]鶴永 [#地付き]松壽 [#本文終わり] 底本1:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1181373/195 底本2:http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2554896 入力:A-9 このテキストは、フロンティア学院図書館(https://arkfinn.github.io/frontier-library/)で作成されました。